ペネトレーションテストツールを使って自分で実施するやり方|選び方やおすすめツールを紹介
ペネトレーションテストは、ツールを導入することで自分で行うことが可能です。
本記事では、ペネトレーションテストツールの選び方や自分で実施する方法をご紹介します。
そのほか、数あるペネトレーションテストツールのなかから、おすすめのツールをご紹介するので、実施を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
ペネトレーションテストとは?
ペネトレーションテストとは、システムやネットワーク、アプリケーションのセキュリティを評価するために、実際に攻撃者の視点から脆弱性を探し出し、システムへの不正侵入や悪用が可能か確認するセキュリティテストのことです。
システムやアプリケーションに潜むセキュリティ上の弱点を発見することが1番の目的です。
発見された脆弱性がどの程度危険かを評価し、ビジネスやシステムへの影響を分析します。
テストの結果を基にして、システムやアプリケーションのセキュリティを改善するのも目的の一つです。
ペネトレーションテストツールとは?
ペネトレーションテストツールとは、システム、ネットワーク、またはアプリケーションの脆弱性を特定・評価し、攻撃の可能性を検証するために使用される専用のソフトウェアまたはプラットフォームです。
ペネトレーションテストツールは、ペネトレーションテストの各プロセスを効率化し、専門家がより迅速かつ正確に脆弱性を発見するのに役立ちます。
ネットワーク全体をスキャンして脆弱性を特定するツール、Webアプリケーションの脆弱性を特定するためのツール、脆弱性を利用して実際の攻撃をシミュレートするツール、パスワードの強度をテストするツールなど、種類はさまざまです。
無料と有料の違い
ペネトレーションテストツールには、無料のオープンソースツールと有料の商用ツールがあります。
それぞれにメリットとデメリットがあり、目的やニーズに応じて適切なものを選択することが重要です。
無料ツールは、コストがかからず、コードが公開されているため、カスタマイズや機能の追加ができる点がメリットです。
一方で、有料ツールに比べて高度な機能や自動化機能が不足していたり、開発者やベンダーからの公式サポートは提供されていなかったりなどのデメリットもあります。
有料ツールは、自動化されたスキャン、エクスプロイトのカスタマイズ、詳細なレポート作成など、多くの便利な機能を提供している点が魅力です。
ベンダーによる公式サポートが付属しているため、問題解決が迅速で信頼性が高いです。
ただし、ライセンス費用やサブスクリプション料金が発生し、中小規模の組織には負担となる場合があります。
ペネトレーションテストツールの選び方
ここでは、ペネトレーションテストツールの選び方を6つご紹介します。
1. 自社に合った種類のツールであるか
まず、自社でどの領域をテストする必要があるのかを明確にすることが重要です。
テスト対象に応じて適切なツールが異なります。
例えば、ネットワーク機器や通信プロトコルの脆弱性を検査するツール、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなどを検出するツール、スマホアプリ特有の脆弱性を検出するツールなどがあります。
また、初期段階の調査や診断にはスキャンツール、発見された脆弱性を実際に攻撃可能か検証するにはエクスプロイトツールなどと、どのような状況にはどのツールが適しているか把握しておくと良いでしょう。
2. テストの目的や対象に適しているか
ペネトレーションテストを行う理由や成果物の要件に応じて、使用すべきツールが変わります。
具体的には、システムやアプリケーションに存在する潜在的な脆弱性を見つける、実際の攻撃者が利用可能な脆弱性を検証し影響範囲を評価する、発見された脆弱性がビジネスに与えるリスクを評価し対策の優先順位を明確にするなどと、テストを実施する目的を明確にしましょう。
また、必要な機能が備わっているかもポイントです。
例えば、ネットワークやWebアプリケーションの脆弱性を広範囲に調べるスキャン機能、発見された脆弱性を実際に利用して攻撃可能かを検証するエクスプロイト機能などがあります。
テストを実施する目的から、どの機能が必要なのかを見極めるのが必要です。
3. ビジネス規模に合っているか
ビジネスの規模によって、セキュリティテストに割ける予算やリソース、必要なテストの範囲が異なります。
中小企業の場合、限られた予算と技術リソースとなるので、基本的な脆弱性スキャンや低コストでの運用が求められるでしょう。
技術者の少なさや専門知識不足をツールでカバーできるかがポイントです。
中堅企業の場合、拡大中のビジネス環境と多様なシステム構成のなかで、適度なカスタマイズ性と複数のシステムに対応できるツールが求められます。
成長に伴う複雑化した環境への対応が課題となるでしょう。
大企業の場合、広範囲なシステム・複数の拠点・専任のセキュリティチームが整っており、高度な機能、スケーラビリティ、継続的な監視やレポート機能が求められます。
高コストの正当化と複雑な環境の一元管理が課題となると考えられます。
4. 更新頻度が適切であるか
日々発見される新しい脆弱性に対応するためには、ツールが迅速にデータベースを更新することが重要です。
重大な脆弱性が発見された場合、それに基づくシグネチャやテストスクリプトがすぐに更新されるツールがおすすめです。
多くの規制や業界標準は、最新の脅威に対応するためのテストを要求します。
古いツールではこれらに準拠できません。
更新頻度を確認する際、ツールのWebサイトやリリースノートを定期的にチェックし、更新スケジュールやリリース頻度を把握しましょう。
推奨される更新頻度は、毎月1回以上の更新が理想であり、 緊急時には即時対応されることが望ましいです。
5. 操作しやすいか
操作が複雑なツールでは、設定や使用方法の理解に時間がかかり、テストの効率が低下します。
操作が簡単なツールを選ぶことで、作業時間を短縮できます。
直感的な操作性を持つツールは、設定ミスや操作ミスを減らすのに役立つでしょう。
専門的な知識を持たないスタッフでも利用できるので、中小企業やセキュリティ専門家が少ない組織にとって特に重要です。
学習コストが低いツールを導入すれば、社員教育にかかる時間や費用も削減できます。
6. 予算内におさまるか
コストパフォーマンスの良いツールを導入し、セキュリティ強化と財務負担のバランスを取るために重要です。
ツールのコストには初期購入費用だけでなく、運用やサポートにかかる費用も含まれるため、トータルコストを把握する必要があります。
ツールの購入費用が現在の予算枠内におさまるか不安な場合は、無料ツールで始め、必要に応じて有料ツールに切り替える戦略も有効です。
年間更新料やライセンス更新費用を考慮に入れ、長期的なコストを計算することも大切です。
また、無料ツールではトレーニングや外部サポートに追加コストが発生する場合がありますが、有料ツールにはサポートが含まれているケースが多いので、その点も考慮した上でツールを選択しましょう。
ツールを導入して自分でペネトレーションテストを実施する方法
ここでは、ツールを導入して自分でペネトレーションテストを実施する方法を3つのステップに分けて解説します。
ステップ1. ペネトレーションテストのシナリオを作成
まず、テストを実施する目的を設定します。
例えば、特定のアプリケーションやネットワークの脆弱性を特定する、セキュリティポリシーが適切に実施されているか検証するなどです。
目的からテストするシステムやアプリケーションの範囲を明確にしたら、想定される脅威モデルに基づき、具体的な攻撃パターンを作成します。
攻撃シナリオは、SQLインジェクション攻撃、クロスサイトスクリプティング、サービス拒否などが挙げられます。
Webアプリケーションのスキャンに特化したツールやネットワークスキャンに最適なツールなど、テストの目的と対象に適したツールを選定しましょう。
ステップ2. ペネトレーションテストの実施
選定したツールをシステムにインストールしたら、テスト対象のIPアドレスやURL、スキャン範囲の設定などの初期設定を行います。
ツールを使用して脆弱性スキャンを開始し、結果を確認し特定された脆弱性を分類します。
発見した脆弱性に対して修正を行った後再テストを実施し、修正が適切に行われたことを確認しましょう。
ステップ3. ペネトレーションテスト報告書の作成
ペネトレーションテスト報告書を関係者と共有し、修正や改善を促すための資料として活用します。
報告書の構成は、テストの目的、対象範囲、使用ツール、発見された脆弱性とその重大度をリスト化、各脆弱性の詳細情報、発見された場所、影響範囲などとなっています。
それに加え、修正方法や具体的なセキュリティ強化策の提案、再テストの予定や追加で必要な対策についても記載しておきましょう。
グラフや表を活用して、視覚的に分かりやすい形式で作成することを推奨します。
おすすめのペネトレーションテストツール
ここでは、おすすめのペネトレーションテストツールを5つご紹介します。
1. Kali Linux
Kali Linuxは、セキュリティテストに特化した、Linuxベースのディストリビューションです。
特に、セキュリティ研究者やペネトレーションテストの専門家に人気があり、セキュリティツールが豊富に搭載されているため、ハッキング技術や脆弱性診断に役立ちます。
Kali Linuxは、Offensive Securityによって開発され、無料でオープンソースとして提供されており、誰でも無料で利用が可能です。
世界中で利用されており、ペネトレーションテストやセキュリティ診断のためのスタンダードツールとして広く知られています。
2. Nmap
Nmapは、ネットワーク探索およびセキュリティ監査のためのオープンソースツールです
主にネットワークスキャニング、ポートスキャン、サービス検出、OS検出、脆弱性評価などを行うために使用されます。
Nmapは非常に強力で柔軟なツールで、ネットワークセキュリティの評価やペネトレーションテストを行う際に、ネットワーク内のホストやサービスを詳細に調べるための基盤です。
コマンドラインインターフェースで操作することが一般的ですが、グラフィカルユーザーインターフェースであるZenmapも提供されており、初心者でも簡単に使えるようになっています。
3. Metasploit Framework
Metasploit Frameworkは、ペネトレーションテスト、セキュリティ研究、脆弱性診断に広く使用されるオープンソースのツールです。
特に、脆弱性のエクスプロイトを実行し、ターゲットシステムの弱点を検証するために利用されます。
Metasploitは、攻撃のシミュレーションを行うために設計されており、セキュリティの専門家にとって非常に強力な武器となるでしょう。
Rapid7によって管理されており、フレームワークの中に脆弱性を利用した攻撃コード、ペイロード、ポストエクスプロイトツールなどが豊富に組み込まれています。
4. Wireshark
Wiresharkは、ネットワークトラフィックのパケットキャプチャおよび解析ツールです。
主に、ネットワーク診断、トラブルシューティング、セキュリティ分析に使用されます。
Wiresharkはオープンソースであり、非常に多機能で広く使用されており、ネットワークセキュリティ専門家やペネトレーションテストを行う際に重要なツールとなります。
ネットワークを流れるパケットをリアルタイムでキャプチャして解析することができ、通信の詳細な情報の表示が可能です。
これにより、ネットワーク上で何が起こっているかを詳細に理解し、潜在的なセキュリティの脆弱性や不正アクセスを検出するために非常に有用です。
5. Burp Suite
Burp Suiteは、Webアプリケーションのセキュリティテストを行うための統合型プラットフォームです。
特に、ペネトレーションテストや脆弱性診断に使用されており、Webアプリケーションに対する攻撃をシミュレートし、セキュリティの弱点や脆弱性を発見します。
Burp Suiteは、PortSwigger社によって開発されており、インタラクティブなテストを通じて、攻撃者の視点でWebアプリケーションのセキュリティを検証するために使われます。
まとめ
ペネトレーションテストは、システムやアプリケーションのセキュリティを確認するために攻撃をシミュレートし、脆弱性を特定する重要な手段です。
ペネトレーションテストツールは、テストを効率的に行うためのツール群で、無料と有料では機能やサポートに違いがあります。
ツール選定では、自社のニーズに合った種類や目的、規模、操作性などを考慮することが大切です。
適切なツールを使用してテストを実施し、報告書を作成することで、企業のセキュリティ向上に貢献できます。