AWSの請求代行サービスのメリット&デメリット|比較するポイントを解説

AWS(Amazon Web Services)は、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスです。
AWSの利用料は、通常クレジットカードまたは請求書で支払う必要があり、請求書払いの場合ドル建てのみの請求となります。
日本円で請求書払いを行いたい方や銀行振込で支払いたい方は、AWSの請求代行サービスの利用がおすすめです。
そこで本記事では、AWSの請求代行の仕組み、請求代行サービスを利用するメリットやデメリットをご紹介します。
記事終盤では、AWSの請求代行サービスを比較するときのポイントをお伝えするので、ぜひサービス選びの参考にしてください。
目次
AWSの請求代行とは?仕組みを解説
AWSの請求代行とは、AWS(Amazon Web Services)を利用する際に発生する請求関連の業務を第三者に委託するサービスです。
AWSはクラウドコンピューティングプラットフォームであり、仮想サーバーやデータベースなどを利用すると利用料金が発生します。AWSの請求は、リソースの利用状況や料金体系の理解が必要なので、中には請求に関する業務が負担となっている企業もあるでしょう。
請求代行サービスを利用すれば、AWSパートナーが代わりに請求処理を行ってくれます。請求処理をAWSに直接行う手間や、複雑なデータ処理や分析などの手間が省けます。
AWSの請求代行を利用するメリット3つ
AWSの利用料の請求では、クレジットカードで支払わなければいけなかったり、ドル建てで請求書払いを行わなくてはいけなかったりと何かと不便に感じる方もいるでしょう。そのような方は、AWSの請求代行サービスの利用がおすすめです。
ここでは、AWSの請求代行サービスを利用するメリットを3つご紹介します。
1.日本円で請求できる
AWSの請求代行サービスを利用すると、日本円で請求書払いができたり、銀行振込ができたりと支払方法の幅が広がります。
AWSと直接契約した場合の支払方法は、クレジットカード払いまたは請求書払いの2種類です。クレジットカード払いは設定から請求を日本円に変えられますが、請求書払いはドル建てのみとなっています。
日本円での請求が可能になると、為替リスクの回避や管理の簡素化などのメリットにつながります。
為替変動による料金の上昇や予測不可能なコスト増加を心配することはなく、より正確な見積もりと予算管理ができるようになるでしょう。AWSの利用料を円単位での管理ができるようになると、国内の経理システムや会計プロセスとの整合性が高まるメリットにもつながります。
2.コストの最適化が可能
AWSの請求代行サービスの中には、ただ請求処理を行うだけではなく、コストの最適化を図れるものもあります。
不要なリソースを検出して削除・終了したり、システム規模に応じたプランを提案したりして、余分なコストをカットできる可能性があります。システムの規模を変えずに無駄なコストをカットすることで、予算管理の向上にもつながるでしょう。
またAWSの利用料の割引を実施しているAWSパートナーは多く、請求代行サービスを利用するだけでコスト削減を実現できる可能性があります。
3.自社の請求に関する業務負担を軽減できる
AWSの請求代行サービスを利用すると、自社がAWSに直接請求処理を行う必要がなくなり、自社の請求に関する業務負担の軽減につながります。
面倒なドル建ての請求書払いを行う必要もなくなるので、利用料や予算を管理するときの負担も軽減できるでしょう。
そのほか請求代行サービスでは、請求処理の自動化、請求情報の監視や分析、AWSの請求に関するサポート提供などを行っています。
請求情報の収集や請求書の作成、支払いの管理などを自動化することで、手作業による請求処理の手間やミスを減らし、効率的な業務運用が期待できます。
利用状況や料金に関する情報の監視や分析レポートの提出により、自社でのリソースの利用状況やコストの傾向などを把握できます。
またAWSパートナーはAWSに関する知識を豊富に持っているので、わからないことがあればその都度問い合わせてサポートを受けられるでしょう。
AWSの請求代行を利用するデメリット5つ
AWSの請求代行サービスを利用する際は、メリットだけではなくデメリットも把握した上で契約しましょう。
ここでは、AWSの請求代行サービスを利用するデメリットを5つご紹介します。
1.一部サービスを利用できない
AWSの請求代行サービスを利用すると、直接契約で使えるサービスが使えなくなる場合があります。たとえば、AWSアカウントの管理、AWSの利用料の確認、AWSからのメール受信などのサービスが使えないケースが多いです。
AWSパートナーと契約すると、アカウント所有者の権限をAWSパートナーに譲渡する必要があります。その場合、AWSパートナーがIAMユーザー用のアカウントを用意してくれるので、IAMユーザーとしてAWSの利用が可能です。
ただし、IAMユーザーは、AWSに関する利用制限や権限などを開放することができません。手続きや申請を行いたい場合は、AWSパートナーに依頼して操作を進めてもらう必要があります。
またAWSの利用料の照会は行えないので、AWSパートナーに連絡して確認しなくてはいけません。AWSパートナーの中には、独自の料金管理画面を用意しているところがあります。
AWSのメール内容は、主にAWSのメンテナンスやサービスアップデートなどです。メールは所有者アカウントで登録したメールアドレスに届くので、AWSパートナーからの情報共有により最新情報を得られるケースがほとんどです。
2.AWSの無料利用枠を利用できない
AWSの請求代行サービスの中には、無料利用枠が使えないものがあります。新規アカウント登録時や一定期間内に利用できる無料利用枠ですが、はじめてAWSを利用する場合はコスト面で損をしてしまう恐れがあるでしょう。
はじめてAWSを利用する企業が請求代行サービスを利用する際は、無料利用枠を適用期間が過ぎてから契約することがおすすめです。
その代わりAWSを利用してから一定期間の間は、自社で請求処理を行わなくてはいけないので理解しておきましょう。
3.AWSに詳しい人材を育成しづらい
AWSの請求代行サービスを利用すると、自社内でAWSに詳しい人材を育成しづらい場合があります。AWSに詳しい人材がいなければ、より深いレベルでAWSを活用することが難しいでしょう。
請求代行サービスでは、特定の業界・ビジネスニーズに特化したカスタマイズや最適化を行わないことが一般的です。自社内にAWSに詳しい人材がいれば、より具体的な要件に合わせた最適な請求戦略を実現できる可能性があります。
またAWSに詳しい人材が一人もいない場合、将来的な新人スタッフの育成にも影響を及ぼすでしょう。ビジネスを営む上で、請求代行サービスに依存しなくてはいけない状況に陥る恐れもあります。
4.情報漏洩のリスクを検討
AWSアカウントをAWSパートナーに譲渡する必要があるので、情報が漏れるリスクがゼロではありません。
AWSアカウントでログイン出来れば、AWSの全ての利用状況やシステム情報などにアクセスできます。そのため AWSの請求代行サービスを利用する際、AWSパートナーの過失によりAWS内の情報が漏洩する恐れがあることを理解しておきましょう。
情報漏洩は、AWSパートナーにとって信用問題に発展するリスクがあります。
情報漏洩のリスクを軽減するために、セキュリティ強化内容や損害を補償する保険有無を比較し、請求代行サービスを選択する必要があります。
5.サービス事業者が倒産する恐れがある
請求代行サービスを提供しているAWSパートナーは、この先ずっとサービスを提供し続けられるとは限りません。倒産する恐れがあることを理解した上で、サービス事業者として継続性があるか見極めることが大切です。
契約中にサービス事業者が倒産すると、AWS上のデータにアクセスできなくなる恐れがあります。
請求代行サービスを選ぶとき、設立されてからどれくらい経っているか、どれくらいの従業員が在籍しているのか、などのポイントを確認しましょう。
請求代行サービスの提供歴が長ければ、AWSの請求に関するノウハウなどを豊富に培っていたり、多くの企業から長年利用されていたりすると考えられます。また従業員が多ければ、すぐに倒産する確率は低いでしょう。
AWSの請求代行サービスを比較する時のポイント4つ
AWSの請求代行サービスの利用を検討している方は、請求代行サービスを行っている業者を比較するときのポイントを把握しておきましょう。
ここでは、AWSの請求代行サービスを比較するときのポイントを4つご紹介します。
1.サービス事業者として信頼性があるか
AWSアカウントを譲渡すると情報漏洩のリスクが高まるので、リスクを軽減するためにサービス事業者として信頼できるところを選びましょう。
たとえば、請求代行サービスの提供歴が長いか、過去に情報漏洩などの問題がないか、AWS認定パートナーであるか、などのポイントに着目すると良いでしょう。
請求代行サービスの提供歴が長いと、多くの企業から長年利用されていると考えられます。また公式サイトで、サービスを利用している企業や導入実績なども確認しておきましょう。
過去に情報漏洩などの問題があったか調べるために、Web検索してみてください。リアルな口コミや評判を確認できるので、サービス選びの参考となるでしょう。
AWS認定パートナーであれば、AWSの請求に関する詳しい情報を持っていると捉えられます。特にAWSを利用して間もない場合やAWSに詳しい人材が自社内にいない場合は、AWSに詳しいサービス事業者であるか見極めることが重要です。
2.割引率や手数料がいくらか
AWSの請求代行サービスを利用すると、通常の料金よりも安く抑えられる場合があります。
一般的な割引率は、3%〜7%引きが目安です。ただし、サービスを提供している事業者によって割引率が異なったり、そもそも割引制度を設けていなかったりするケースがあるので理解しておきましょう。
また手数料も、無料であったり利用料の10%であったりとAWSパートナーによってさまざまです。手数料は予算管理でも大切な要素となるので、契約する前に詳しく聞いておきましょう。
3.支援体制が整っているか
特にはじめてAWSを利用する場合やAWSを使い慣れていない場合は、支援体制が整っている請求代行サービスの利用がおすすめです。
請求代行サービスの主なサポート内容は、請求処理、請求情報の監視、専門知識を活かした技術サポート、問い合わせ対応などです。AWSパートナーによって、支援体制の内容は異なります。
問い合わせ対応が可能でも、24時間365日受付のところがあれば、そうでないところもあります。オプション追加で、24時間365日対応可能にできる場合もあります。
4.その他サービスが充実しているか
請求代行サービスといっても、中には請求に関するサポートだけではなく、システムの設計から運用までサポートしてくれるケースがあります。
その場合、請求代行サービスをメインに契約するというより、システム設計や運用サービスのオプションとして請求代行サービスを利用すると考えると良いでしょう。
システムの運用サポートの利用も検討している場合は、請求代行サービスを含めさまざまなサービスを利用できる事業者がおすすめです。複数のサービスと契約する手間が省け、予算管理などの経理に関する業務負担の軽減につながるでしょう。
AWSの請求代行サービス一覧8選

AWSの請求代行サービスを利用しようかと考えている方は、自社に合ったサービスを選びましょう。まずはどのようなサービスがあるかを知って、各サービスの特徴や料金を比較することがポイントです。
ここでは、AWSの請求代行サービスを8選ご紹介します。
クラスメソッド株式会社
クラスメソッド株式会社は、AWSの利用を総合的に支援するサービスを提供しています。AWSのサポートサービスの中にはAWS請求代行サービスがあり、初期費用および月額手数料無料で円建てでの請求書払いが可能です。
AWSの請求代行サービスを利用すると、AWSサービスを割引価格で利用できるようになります。さらにセキュリティ設定を無償で提供し、エンタープライズ相当のAWSサポートを無償で受けられます。
料金は、一律5%割引プランがAWS全サービスの全リージョンを5%OFF、EC2・CDN割引プランが主要EC2オンデマンドを11%OFF・CloudFrontのアウトバウンド通信費を62%OFF、組織管理プランがAWS全サービスの全リージョンを3%OFFで利用できます。
またセキュリティチェック・通知、ルートユーザー管理、高額不正利用防止、外部アクセス確認、MFAアラート・強制など、さまざまな機能が標準提供されています。エンタープライズ相当のAWSサポートでは、日本語と英語で提供される24時間365日のAWSサポートを無償での利用が可能です。
株式会社Y2S
株式会社Y2Sは、AWSの導入から設計・構築、移行、監視運用、セキュリティまでサポートするサービスを提供しています。AWSの請求代行サービスでは、クレジットカード払いや円建ての請求書発行での対応が可能です。
AWSの請求代行だけではなく、ハードウェアやソフトウェアの運用経験を活かし、適切で迅速な無駄のないマネジメントサービスを展開しています。
料金は、代行手数料20%〜です。
株式会社アイディーエス
株式会社アイディーエスは、AWSの監視・運用に柔軟に対応する企業です。AWSの請求代行サービスを利用すると、AWSサービスを5%~割引で利用でき、手数料無料で円建て・請求書払いの形式で対応してもらえます。
そのほか、AWSビジネスサポート相当のサポートが無料、ROOTアカウントの利用が可能です。
またトレンドマイクロ社のDeep Securityを用いたセキュリティ強化サービスを提供しており、F/W・WAF・ネットワーク監視・セキュリティログ監視・変更監視・不正プログラム監視などを実現します。
料金は、問い合わせる必要があります。
アイエックス・ナレッジ株式会社
アイエックス・ナレッジ株式会社は、課金代行だけではなく、構築支援、運用支援、分析基盤構築支援を行っている企業です。24時間365日の有人監視を実現しており、トラブルがあってもすぐに対応してもらえます。
課金代行サービスでは、クレジットカード払いのAWS利用料を円建て請求書払いで対応できます。
料金には、AWS利用料とAWS利用料の10%である課金代行手数料がかかります。AWS利用料が50,000円以下の場合は、課金代行手数料が一律5,000円です。
ヴァイタル・インフォメーション株式会社
ヴァイタル・インフォメーション株式会社は、AWS Partner Networkスタンダードコンサルティングパートナーに認定されている企業です。豊富なAWSに関する知識を培っており、AWSサービスについてさまざまなサポートを行っています。
請求代行サービスでは、USドル・クレジットカードによるAWSへの支払いを、通常の経理処理となる日本円の請求書払いで行えます。AWSのさまざまなサービスを利用する場合、サービスごとに利用明細の作成が可能です。
料金は、問い合わせる必要があります。
アイレット株式会社
アイレット株式会社は、cloudpackサポートを無料で提供している企業です。AWSの請求代行サービスは、AWSサービスの利用料が3%割引、日本円での請求書払いが可能です。
AWSと直接契約するよりもコストを抑えられ、経験豊富なcloudpack のエンジニアによるサポートも受けられます。
料金は、請求代行サービスの場合が初期費用と月額費用ともに無料、請求代行サービス+Organizationsの場合が初期費用100,000円で月額費用が20,000円です。
株式会社アイエンター
株式会社アイエンターは、AWSの導入から設計、構築、移行、運用、請求代行までサポートしている企業です。そのほか、IoTやシステム連携、AWS移行に伴うアプリやシステム改修も実施しています。
AWS請求代行サービスを利用すると、AWSの利用料を円建て請求書による支払いができるようになります。
さまざまな企業の対応実績の中には、会員向けWebシステムのAWS移行、他社クラウドからのAWS移行、ポイントキャンペーンアプリ用AWS構築などがあり、AWSに関する実績が豊富です。
料金は、問い合わせる必要があります。
株式会社サーバーワークス
株式会社サーバーワークスは、AWSの利用料を最適化できるサービスを提供している企業です。AWSサポートを24時間365日受付しており、AWSに関する疑問事をその都度解決してもらえます。
また損害保険付帯サービスを扱っており、万が一のAWSの障害やサイバー攻撃などの解決に役立つでしょう。東京海上日動火災保険株式会社と連携し、無料でサービス提供しています。
料金は、AWS利用料の10%の請求代行手数料とAWSサポート料がかかります。サーバーワークス独自開発サービスである「Cloud Automator」を利用できるようになります。
まとめ
AWSの請求代行サービスを利用することで、コストの最適化や請求に関する自社の業務負担など、さまざまなメリットにつながります。
日本円での請求書払いや銀行振込など、さまざまな支払方法に対応できるようになるので、ドル建ての請求書払いが面倒だという企業におすすめです。
ただし、自社のAWSアカウント情報をAWSパートナーが管理することになるので、情報漏洩のリスクが高まったり、一部サービスが利用できなくなるなどのデメリットもあります。
これらのデメリットは、セキュリティ強化を行う、代替サービスを活用するなどで対策できるケースがほとんどです。
AWSの請求手続きによる業務負担を軽減したい方や、支払方法の種類を増やして柔軟に対応できるようにしたい方は、ぜひ請求代行サービスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。