Amazon Connectでできることとは?ServiceCloudの使用で簡易コールセンターシステムを作成する方法を紹介
Amazon Connectとは、AWSが提供しているコンタクトセンターサービスです。
クラウドベースとなっているので、物理的なインフラを設置する必要はありません。
本記事では、Amazon Connectでできることについて機能一覧をご紹介します。
Amazon ConnectとServiceCloudを使って簡易コールセンターシステムを作成する方法もお伝えするので、コールセンターの導入を検討している場合はぜひ参考にしてください。
Amazon Connectとは?

Amazon Connectは、AWSが提供するクラウドベースのコンタクトセンターサービスです。
企業が顧客とのコミュニケーションを効率的に管理できるように設計されており、音声通話やチャット、メール、SNSなどさまざまなチャネルを通じた顧客対応が可能です。
Amazon Connectはクラウドサービスであるため、物理的なインフラを設置する必要がなく、数分でコンタクトセンターの設定ができます。
ビジネスの需要に応じて、簡単に規模を拡大したり縮小したりすることが可能です。
急な問い合わせの増加にも対応可能で、オペレーションの柔軟性が高いといえます。
従量課金制で必要な分だけ支払うため、初期投資が少なく、コスト効率が高いです。
活用例としては、企業のコールセンターとして顧客からの問い合わせへの対応、AIチャットボットや自動音声応答の活用による定型的な問い合わせの自動処理、WebチャットやEメールの統合対応が挙げられます。
Amazon Connectでできることと機能一覧

ここでは、Amazon Connectでできることについて、どのような機能が使えるかを解説します。
1. コンタクトセンター機能
Amazon Connectのコンタクトセンター機能は、顧客と企業とのインタラクションを効率的に管理し、提供するためのさまざまな機能を包括しています。
コンタクトセンター機能を活用すると、企業はカスタマーサービスの向上や運用効率の最適化を実現できます。
具体的には、顧客からの電話を受けるための自動音声応答システムを利用でき、顧客は自動的にメニューから選択して適切なエージェントにつなげることが可能です。
顧客に対して自動的に電話をかける機能があり、プロモーションやリマインダー、調査、アラート通知などの目的で使用できます。
また、顧客が電話をかけてきた際に、音声メニューで自動的に案内し、適切な担当者へ転送する機能も活用が可能です。
これにより、顧客が自分で情報を取得したり、簡単な質問に答えられるようになります。
2. オムニチャネル対応
Amazon Connectのオムニチャネル対応とは、顧客との接点を複数のコミュニケーションチャネルで提供して統合的に管理する機能です。
オムニチャネル対応により、顧客は電話、チャット、メール、SMS、SNSなどのさまざまな方法でサポートを受けられ、企業はそれらのチャネルを一元管理できます。
顧客情報は全チャネルで共通して管理されるため、顧客の過去のやり取りに基づいたパーソナライズされたサービスの提供が可能です。
また、顧客が異なるチャネルを使用しても、インタラクションの履歴や内容が引き継がれ、シームレスに対応できます。
例えば、顧客がチャットで問い合わせ後に電話をかけても、エージェントは過去のやり取りを確認してスムーズに対応が可能です。
3. ノーコードによるコンタクトフロー設計
Amazon Connectのノーコードによるコンタクトフロー設計は、技術的な専門知識がなくても、ドラッグ&ドロップの簡単な操作でコンタクトセンターのフローを設計できる機能です。
これにより、非技術者でも直感的にフローを作成・管理でき、迅速にカスタマイズを行えます。
作成したコンタクトフローは、即座にテストして動作を確認できます。
これにより、実際に運用を始める前に問題点を洗い出し改善が可能です。
フローの動作確認が迅速にできるため、問題が発生した際にも早期に対応できます。
また、作成したコンタクトフローはエクスポートしたり、他の環境にインポートしたりできるため、複数のAmazon Connectインスタンスや異なるチームでの再利用が可能です。
4. 高音質オーディオ
Amazon Connectの高音質オーディオは、顧客とエージェント間の通話品質を向上させるための機能です。
通話時に音声がクリアで途切れることなく、顧客にとって快適なコミュニケーション環境が提供されます。
通常、音声通話には圧縮技術を使用して、データ量を小さくし、ネットワーク帯域を節約しますが、Amazon Connectでは、圧縮された音声でも品質が高く維持されるように最適化されています。
高度な音声圧縮技術を使用しても音質が劣化しないため、電話やオーディオ会話でのストレスが減少するでしょう。
また、音声通話に使用するコーデックにおいて、業界標準の高音質コーデックをサポートしているため、顧客とエージェントの会話がよりクリアで鮮明になります。
5. ソフトフォン機能
Amazon Connectのソフトフォン機能は、物理的な電話機を使わずに、コンピュータやモバイルデバイスを介して通話を行える機能です。
コンタクトセンターのエージェントは、ブラウザや専用アプリケーションを使って、音声通話や他のインタラクションを行えます。
ソフトフォンは、Amazon Connectのコンタクトセンターに組み込まれており、通話の受信や発信、通話中の操作が直感的に操作できます。
エージェントは、特別なハードウェアを使わずに、通話品質や機能に優れた体験を得ることが可能です。
また、Amazon Connectのダッシュボードや管理コンソールと連携しており、通話履歴や顧客情報、インタラクション履歴などのデータが一元的に管理されます。
そのため、エージェントは通話に関するすべての情報を瞬時に参照でき、効率的な顧客対応が可能になります。
6. 顧客管理システムとの連携機能
Amazon Connectの顧客管理システムとの連携機能は、Amazon Connectが外部の顧客管理システムと連携すると、コンタクトセンターのエージェントが顧客情報を即座に取得し、効率的に対応できるようにする機能です。
その結果、顧客対応の迅速化とパーソナライズされたサービス提供が可能になります。
顧客情報をリアルタイムで参照できるため、エージェントは過去の問題やニーズを把握し、顧客ごとの状況に合わせたパーソナライズされた対応が可能です。
顧客にとっては、手間を省いて迅速なサポートを受けられるため、満足度が向上するでしょう。
また、顧客管理システムと連携することで、エージェントはシステム間で顧客データを手動で入力・更新する手間が省けます。
通話中やサポート中に、すべてのデータが一元的に管理されるため、エージェントの作業効率が向上します。
7. 通話録音・モニター機能
Amazon Connectの通話録音・モニター機能は、コンタクトセンターで行われる通話の録音とリアルタイムでのモニタリングを可能にする機能です。
エージェントのパフォーマンス向上、品質管理、トレーニング、コンプライアンスの維持などに役立ちます。
エージェントの通話をリアルタイムでモニタリングすることで、顧客対応の品質を即座に把握し、必要に応じてアドバイスやサポートを提供できます。
モニタリング中にエージェントが困っている場合、スーパーバイザーはインターフェースを通じてリアルタイムでの指示が可能です。
また、通話録音データは、AWSのセキュリティ機能を活用して暗号化されて保存されるので、データの安全性が保たれ、プライバシーが守られます。
録音データへのアクセスは、役割ベースのアクセス制御を使って制限でき、機密情報の保護が可能です。
8. レポート機能
Amazon Connectのレポート機能は、コンタクトセンターのパフォーマンス、エージェントの活動、顧客とのインタラクションを分析するための強力なツールです。
活用すると、運営状況をリアルタイムで把握し、業務の効率性を向上させるためのデータ駆動型の意思決定が可能になります。
エージェント別、チーム別、または全体のパフォーマンスを分析するための詳細なレポートでは、エージェントの応答時間、通話の平均処理時間、サービスレベル、エージェントの稼働状況などを確認できます。
レポートを参考にすると、エージェントの強みや改善点を把握し、トレーニングやリソースの最適化に活用できるでしょう。
9. チャット機能
Amazon Connectのチャット機能は、顧客とのリアルタイムなテキストベースのコミュニケーションを提供する機能です。
顧客がWebサイトやモバイルアプリケーションを通じてコンタクトセンターとチャットを行い、エージェントとやり取りできるようにします。
複数の顧客と同時にチャットを行うことができるため、エージェントは1対1の電話サポートよりも効率よくサポートを行えます。
そのため、エージェントの負担を軽減し、より多くの顧客への対応が可能です。
また、電話やメールといった他のチャネルと統合されているので、顧客が異なるチャネルでサポートを求めても、すべてのやり取りを一元的に管理できるため、顧客対応がシームレスになります。
チャットボットを導入すると、よくある質問や簡単なリクエストに自動的に対応できます。
エージェントが対応する前に初期対応を行うことで、顧客を適切なエージェントに案内が可能です。
Amazon ConnectとServiceCloudで簡易コールセンターシステムを作成する方法

簡易コールセンターシステムの作成で必要なものは、以下のとおりです。
- AWSおよびAmazon Connectのアカウント
- Salesforceアカウント
- テスト用の電話
AWSとAmazon Connect、Salesforceのアカウントは、公式サイトから登録できます。
ここでは、Amazon ConnectとServiceCloudで簡易コールセンターシステムを作成する方法をご紹介します。
1. Amazon Connectを設定する
Amazon Connectの設定方法は、以下の5ステップです。
1. インスタンスを作成する
まずは、Amazon Connectでインスタンスを作成します。
インスタンスとはコールセンターの役割を果たす電話番号に相当します。
同一企業でも提供するサービスが異なれば、対応する部署も違うため、異なる電話番号を用意するケースがあります。
無人音声応答機能を使ってメニュー番号で振り分けられますが、会員向けには手間をかけずにすぐに対応したい場合は番号自体を変えるのが効率的です。
新しいユーザーを追加する場合は、「Amazon Connect内にユーザーを保存」を選び、管理パネルのインスタンス名を入力します。
電話番号は直通用やフリーダイヤル用があり、フリーダイヤルは通話料が高くなる点に注意が必要です。
取得した電話番号が正式なコールセンターの番号となるので、しっかり控えておきましょう。
2. キューを作成する
インスタンスを作成したら、キューとプロファイルを作成します。
キューとは、郵便局や銀行の窓口のようなものです。
用件に応じて受付番号を受け取り、順番が来ると窓口に呼ばれるように、キューは特定の用件を処理する窓口に相当します。
例えば、振込の対応を行う窓口は1番〜5番、年金受け取りは10番〜13番などと、特定の用件に対応するセットとしてキューを設定しましょう。
キューの名前や窓口の営業時間をオペレーション時間として設定しますが、後から変更できるためデフォルトの設定で進めても問題ありません。
3. ルーティングプロファイルを作成する
キューを作成したら、ルーティングプロファイルを作成します。
この工程では、オペレーターとキューを結びつけます。
通常、1人で複数の窓口を担当する場合もありますが、効率的に運営するためには、誰がどの窓口を担当するか事前に決めておくのが一般的です。
オペレーターごとに窓口を手動で割り当てる代わりに、ルーティングプロファイルを設定すると、、特定のスキルを持つオペレーターグループと対応する窓口を簡単に組み合わせられます。
また、オペレーターが不足している場合でも、個々の担当を変更することなく、ルーティングプロファイルを変更するだけで他のチームに窓口を任せられます。
4. ユーザーを作成する
ユーザーは、組織内でいう社員や役職のことです。
例えば、Aさんが管理者でBさんがオペレーターの場合、Aは管理者、Bはエージェントと割り当てられます。
電話対応を行う人数分ユーザーを作成し、先に設定したルーティングプロファイルやセキュリティプロファイルを各ユーザーに割り当てましょう。
5. 問い合わせフローを作成する
問い合わせフローは、システムが電話を受けてオペレーターにつなぐまでの流れを設計するシナリオです。
例えば、総合受付の場合、利用者が音声ガイダンスに従ってメニューを選択すると、適切な部署に転送できます。
どのような音声ガイダンスを流し、どのキー入力でどのキューにつなぐかをダイヤグラムで線を引いて設定します。
特に何も設定しない場合でも、必ずキューに転送されるように設定が必要です。
音声プロンプトを使用する場合、最初に言語の設定が必要で、プロンプトの内容やキューへの転送設定など、各設定を丁寧に行いましょう。
2. ServiceCloudを設定する
ServiceCloudの設定方法は、以下の5ステップです。
1. CTIアダプターをインストールする
SalesforceでAmazon Connectを利用できるように、AppExchangeからCTIアダプターをインストールします。
CTIとは、電話とコンピュータを連携させるためのプログラムです。
Amazon Connectだけでなく、他の多くのシステムでもCTIが使用されています。
CTIを導入すると、例えば電話がかかってきた際に自動的に顧客情報を表示するなど、コールセンターシステムをより効率的に活用できます。
Salesforce版のAmazon Connect CTIは、AppExchangeからインストール可能です。
2. CCPを設定する
先に、インストールしたCTIアダプターを設定画面で開きましょう。
Amazon Connect CCP URLに、Amazon Connectで作成したインスタンス名を入力します。
3. ソフトフォンレイアウトを設定する
CCPを設定したら、コールセンター設定画面でソフトフォンレイアウトを設定します。
電話がかかってきた際、CTIがSalesforceでどのように動作するかを決定しましょう。
具体的には、どの画面にどの項目を表示するか、電話番号で検索した際に一致するレコードがあればポップアップで表示するかなどを設定します。
4. コンソールにソフトフォンレイアウトを追加する
ソフトフォンレイアウトを設定したら、アプリケーションマネージャからソフトフォンレイアウトを追加します。
「セールス」アプリケーションを編集モードで開き、ユーティリティ項目から「ユーティリティ項目を追加」オプションを選択しましょう。
設定を保存すると、標準コンソール画面に電話アイコンが表示されるようになります。
アイコンをクリックすると、Amazon Connectのログイン画面が表示されるのでログインしておきましょう。
5. 動作する確認する
最初にAmazon Connectでインスタンスを作成した際に取得した電話番号にかけます。
数秒後、ソフトフォンが「受話通話」に切り替わり、Salesforceのコンソールに顧客の情報が表示されます。
事前に検索条件を設定しているので、該当する顧客のデータが自動的に表示され、電話を受ける前にその顧客の氏名や住所、過去の取引内容などの確認が可能です。
電話を受ける際に事前情報を把握した状態で対応できるようになれば、簡易コールセンターシステムの完成です。
まとめ
Amazon Connectは、簡単にコールセンターを構築できるクラウドサービスで、さまざまな機能を提供しています。
コンタクトセンター機能やオムニチャネル対応、ノーコード設計など、柔軟で使いやすいツールがそろっています。
Amazon ConnectとServiceCloudを連携すると、簡易なコールセンターシステムが構築可能です。
設定はインスタンス作成から問い合わせフロー、ユーザー作成などのステップを経て、Salesforceで顧客管理やソフトフォン機能の設定を行うことで、効率的なカスタマーサポート環境を整備できます。