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AWS障害に備えるには?マルチAZ・リージョン冗長化・DR設計で可用性を高める方法【2026年版】

2026.07.27

/最終更新日:

「AWSはクラウドだから落ちない」——そう考えていた矢先に大規模障害のニュースが流れ、自社システムが数時間停止した。そんな経験をした情シス担当者は少なくないはずです。クラウドであっても障害はゼロにはなりません。重要なのは「障害が起きない前提」ではなく、障害が起きても事業を止めない設計に切り替えることです。

本記事では、AWS障害がなぜ起きるのかを整理したうえで、マルチAZ・マルチリージョンによる冗長化、DR(災害復旧)の4つの戦略、RTO/RPOの決め方、そして何から着手すべきかまでを、情シスの意思決定に使える形で解説します。

想定読者

本記事は、次のような方を想定しています。

  • 過去のAWS障害で自社システムが停止し、「次はどう備えるか」を検討している情シス担当者
  • 基幹システムやWebサービスをAWSで運用しており、可用性の高い構成に見直したい方
  • 経営層から「障害対策は十分か」と問われ、根拠を持って説明できる状態を作りたい方
  • 冗長化やDRという言葉は知っているが、自社にどこまで必要かの判断基準がほしい方

AWSでも障害は起きる|「クラウドだから安心」という誤解

まず前提として、AWSは非常に高い可用性を持つインフラです。しかし「絶対に落ちない」わけではありません。実際に、特定リージョンのネットワーク機器やストレージ、認証基盤などの不具合により、複数のサービスが同時に影響を受ける大規模障害は過去に繰り返し発生しています。

ここで理解しておくべきなのが、AWSの 責任共有モデル です。AWSは「クラウド“の”セキュリティと可用性(データセンター・ハードウェア・基盤サービス)」に責任を持ちますが、「クラウド“内”の可用性(どう冗長化して構成するか)」は利用者側の責任です。つまり、AWSが用意している冗長化の仕組みを使うかどうかは、設計者に委ねられています。

障害の影響が大きくなる典型は、単一障害点(SPOF:Single Point of Failure) を残したまま運用しているケースです。たとえば以下のような構成は、その箇所が落ちるとシステム全体が停止します。

  • サーバー(EC2インスタンス)を1台だけで動かしている
  • データベースを冗長化せず、単一のインスタンスで運用している
  • すべてのリソースを1つのアベイラビリティゾーンに集約している

「クラウドに載せたから可用性は上がったはず」という思い込みが、実は最も危険です。クラウドは可用性を高める“部品”を提供するだけで、組み立てるのは利用者だと捉え直すことが、対策の出発点になります。

過去の大規模障害を振り返ると、影響が長引いたケースの多くは「障害そのもの」よりも「復旧手順が整理されていなかった」「切り替え先を用意していなかった」といった、事前準備の不足に起因しています。裏を返せば、備えのある企業ほど同じ障害でも影響を最小限に抑えられているということです。障害は完全には避けられなくても、影響の大きさは設計でコントロールできる——これが本記事を通じてお伝えしたい核心です。


可用性を左右する3つの単位|AZ・リージョン・サービス

AWSで冗長化を考えるとき、まず押さえるべきは「どの単位で障害に備えるか」です。障害は必ずしもAWS全体で起きるわけではなく、多くの場合は特定の範囲に限定されます。備える範囲によって、必要なコストと手間が大きく変わります。

  • アベイラビリティゾーン(AZ):1つのリージョン内にある、物理的に分離された複数のデータセンター群。多くの障害はAZ単位で発生します。複数AZに分散するだけで、防げる障害の範囲は大きく広がります。
  • リージョン:東京・大阪など地理的に離れた拠点。リージョン全体に及ぶ障害や、大規模災害への備えはリージョン単位で考えます。
  • サービス:EC2・RDS・S3など個別のサービス。特定サービスだけに障害が起きることもあり、依存関係の把握が重要です。

多くの企業にとって費用対効果が最も高いのは、まず複数AZに分散することです。リージョンをまたぐ冗長化は強力ですが、コストと運用負荷が跳ね上がるため、「どこまで必要か」を事業インパクトから逆算して決めるのが現実的です。


障害に備えるAWSの冗長化設計|マルチAZ・マルチリージョン

ここからは具体的な冗長化の型を見ていきます。代表的な3段階を、防げる障害・コスト・運用負荷で比較すると次のようになります。

構成 防げる障害の範囲 代表的な実装 コスト 運用負荷
単一AZ構成 ほぼ防げない EC2 1台・単一DB
マルチAZ構成 AZ単位の障害 ELB+複数AZにEC2分散、RDSマルチAZ
マルチリージョン構成 リージョン全体の障害・大規模災害 リージョン間レプリケーション、Route 53フェイルオーバー

マルチAZ構成は、可用性設計の“標準形”です。ロードバランサー(ELB)配下に複数AZのEC2を配置し、データベースはRDSのマルチAZ機能で自動的に待機系へ切り替わるようにします。片方のAZが落ちても、もう片方で処理を継続できるため、単一障害点が大きく減ります。多くの業務システムはここまでで十分な可用性を確保できます。

マルチリージョン構成は、リージョンをまたいでシステムを複製する構成です。東京リージョンが全面的に停止しても大阪リージョンで継続できるため、金融・決済・社会インフラなど「数分の停止も許されない」システムで採用されます。一方で、データの整合性を保つ仕組みや切り替えの自動化が必要になり、設計・運用の難易度とコストは格段に上がります。

特に難しいのがデータの一貫性です。2つのリージョンで同じデータベースを同時に書き換えると、どちらが正しい最新データかという問題が発生します。そのため、片方を主・もう片方を待機とする方式にするか、リージョン間のレプリケーション遅延を許容できる設計にするかなど、アプリケーションの特性に踏み込んだ判断が求められます。「サーバーを2拠点に置けば済む」という単純な話ではない点は、あらかじめ理解しておく必要があります。

重要なのは、すべてを最高スペックにしないことです。全システムをマルチリージョン化すればコストは膨れ上がります。「止まると事業にどれだけの損害が出るか」でシステムを分類し、優先度の高いものから冗長化していくのが、投資として合理的です。

そもそも自社の構成にどこまで冗長化が必要か迷う場合は、現状の構成診断からご相談いただけます。c3indexのAWS構築・運用支援に相談することで、事業インパクトに見合った現実的な設計をご提案します。


DR(災害復旧)の4つの戦略|RTO・RPOで選ぶ

冗長化が「障害中も動かし続ける」ための備えだとすれば、DR(Disaster Recovery:災害復旧) は「大規模障害・災害で停止したあと、いかに早く・どこまで戻すか」の備えです。DR戦略を選ぶ物差しになるのが、次の2つの指標です。

  • RTO(Recovery Time Objective):目標復旧時間。停止からどれだけの時間で復旧させるか。
  • RPO(Recovery Point Objective):目標復旧時点。どの時点のデータまで戻せれば許容できるか(=失ってよいデータ量)。

AWSにおける代表的なDR戦略は、以下の4つに整理できます。下にいくほど復旧は速い一方、コストは高くなります。

DR戦略 概要 RTO/RPO コスト
バックアップ&リストア 別リージョンにバックアップを保管し、障害時に構築・復元 時間〜日単位
パイロットライト 最小限の中核(DB等)だけ常時稼働させ、障害時に拡張 十数分〜時間
ウォームスタンバイ 縮小版の環境を常時稼働させ、障害時に拡大 数分〜十数分 中〜高
マルチサイト(アクティブ/アクティブ) 複数拠点で常時フル稼働し、障害時は自動で寄せる ほぼ即時

多くの中堅・中小企業にとっては、バックアップ&リストア、またはパイロットライトから始めるのが現実的です。まずは「どの時点のデータまで戻せれば事業が回るか(RPO)」「何時間以内に復旧すれば損害を抑えられるか(RTO)」を業務部門と合意し、その目標を満たす最小構成を選ぶ——この順番が、過剰投資も過小投資も避けるコツです。

なお、バックアップの実装そのものについては、専用サービスであるAWS Backupの仕組みが参考になります。


何から始めるか|可用性設計の進め方

「冗長化もDRも必要なのはわかった。でも自社はどこから手をつければいいのか」——ここでつまずく企業は多いものです。いきなり全システムの再設計に着手するのではなく、次の順序で進めることをおすすめします。

  1. 重要システムの棚卸しと優先度付け:止まると事業に直結するシステムを洗い出し、影響度でランク付けする
  2. RTO/RPOの合意形成:システムごとに「どこまで止まっても許容できるか」を業務部門・経営層と合意する
  3. 単一障害点の特定:現状の構成でSPOFになっている箇所(単一EC2・単一AZ・冗長化していないDB)を洗い出す
  4. 優先度の高いものからマルチAZ化:最も費用対効果が高い「複数AZ分散」から着手する
  5. DR戦略の選定と訓練:優先システムにDR戦略を適用し、実際に切り替え・復旧を試す訓練まで行う

特に見落とされがちなのが、5番目の「復旧できるかを実際に試す」という視点です。バックアップは取っていたが、いざというときに復元手順が誰にもわからなかった——という事故は珍しくありません。DRは「設定して終わり」ではなく、復旧訓練までを含めて初めて機能すると考えてください。

また、可用性設計は一度作れば終わりではなく、システムの追加・変更に合わせて継続的に見直すものです。日々の監視と定期的な構成レビューをセットで運用することで、はじめて「障害に強い状態」を維持できます。


よくある質問(FAQ)

Q. マルチAZにすれば、もうAWS障害で止まることはないですか?

A. AZ単位の障害には強くなりますが、リージョン全体に及ぶ障害や、特定サービス起因の広域障害までは防げません。「どの範囲の障害まで許容できないか」を決め、必要に応じてマルチリージョンやDRを組み合わせて判断してください。

Q. マルチリージョン構成は必須ですか?

A. すべての企業に必須ではありません。数分の停止も許されない基幹系・決済系では有効ですが、コストと運用負荷が大きく上がります。多くの業務システムは、マルチAZ+適切なDR戦略で十分な可用性を確保できます。事業インパクトから逆算して決めるのが合理的です。

Q. RTOとRPOは、誰が決めるべきですか?

A. 情シス単独ではなく、業務部門・経営層との合意で決めるものです。「何時間以内に復旧すべきか」「どの時点のデータまで戻せればよいか」は事業上の判断であり、技術だけでは決められません。合意した目標が、そのまま構成とコストの根拠になります。

Q. すでにAWSを使っていますが、後から冗長化できますか?

A. できます。稼働中のシステムでも、ロードバランサーの導入・複数AZへの分散・RDSのマルチAZ化などは段階的に適用可能です。まずは現状構成の診断で単一障害点を洗い出すことから始めるのが確実です。

Q. 冗長化するとコストはどれくらい上がりますか?

A. 構成によって大きく異なります。マルチAZ化はリソースがおおむね二重になる分の増加、マルチリージョンはさらに上乗せになります。詳しい費用感は構築費用の相場記事を参考にしつつ、「守るべきシステム」に絞って投資するのが現実的です。


まとめ

AWS障害への備えは、「落ちない前提」から「落ちても止まらない設計」への発想の転換から始まります。本記事の要点は次の通りです。

  • クラウドでも障害は起きる。冗長化するかどうかは利用者側の責任(責任共有モデル)
  • まず費用対効果の高いマルチAZ構成を標準とし、事業インパクトに応じてマルチリージョンを検討する
  • DRはRTO/RPOを業務部門と合意し、バックアップ&リストアやパイロットライトから現実的に始める
  • 単一障害点の特定 → 優先度付け → 段階的な冗長化 → 復旧訓練の順で進める
  • 設定して終わりではなく、監視と定期レビューで「障害に強い状態」を維持する

過剰な投資も、備え不足も、どちらも経営リスクです。自社にとって最適なバランスを見極めることが、可用性設計の本質と言えます。


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c3indexは、製造業をはじめとする企業のAWS構築・運用を専門とするシステム会社です。「自社の構成にどこまで冗長化が必要か」「限られた予算で障害リスクをどう下げるか」といった判断から、マルチAZ・DR構成の設計・構築・運用監視までを一貫してご支援します。

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